『相棒』
「うん?」
午前中の授業はすべてターンエンド。昼食も食べ終わり、一息ついたころ。
もう一人の僕が、学校では珍しく話しかけてきた。
誰かに不審に思われないように机に突っ伏し、寝たふりをしながら小声で答える。
『勉強は楽しいか?』
「…全然」
『そうか』
なぜか目が輝いてる。
『代わらないか?』
しばし思考タイム。午後は別にノートをとる必要のない(と勝手に思っている)授業ばかりだなー
課題も別に出てたわけじゃないしーでもなんで突然?
カオスから抜け出て、多少の疑問は残るものの了承した。
「じゃ、僕は部屋に行ってる」
部屋とはもちろん心の部屋のこと。
『ああ。…俺の部屋は入らないでくれよ?』
「わかってるって」
不安そうだけど、僕の言葉に安心したようで、さっきのうれしそうな顔に戻る。
そして僕達は入れ替わった。
「…という感じで小説を書きたいんだけどいいかな?」
『いいんじゃないか?相棒の宿題の助けになるなら』
「で、でも!偽名だけど一応もう1人の僕のことだし!」
『誰も本当のことだなんて思わないだろ?』
「う…実はそれが一番嫌なんだけど…」
『?どういうことだ?』
「なんでもない!!さ、宿題だー宿題だー!」
『わかったぜ、相棒』
「…笑わないでよ…」
『くく…すまない…で、結末はどうなるんだ?』
「えーとね!とりあえず敵が出てきて!2人で力を合わせてやっつけるんだぜー!」
『で、ヒロインは2人のどちらに惚れるのか、と』
「もー!!違ーう!!」
『わあったわあった』
「わかってないいいいその言い方はわかってない!」
『ま、ヒロインは表の主人公に惚れるんだろうけどな』
「えー?闇の主人公だよー?」
『?なんでだ?』
「…なんでこういうところは…しかもデシャヴ…」
『とりあえず結末だ。起承転結が大切だってじいちゃん言ってたじゃないか』
「うーん…とりあえず2人はこれからも闘っていく、みたいな」
『…ずっとか?』
「え?あ、まあ学校の宿題だし、そんなもんでいいと思うよ」
『そうか…終わりが来るなんて悲しいからな…』
「もう1人の僕?」
『さ、急がないと徹夜だぜ?』
「あー!やばい!!」
ペンを動かしていたけれど、僕の心には何かが引っかかっていた。
「…というような小説を」
『ロシアの民芸品かよ』