かつん、と小石を蹴った音が響いた。
常に暗闇に支配されているこの地下の遺跡は、マリクの胸を懐かしさと共に罪悪感が締めつける。
ここで産まれ、育ち、洗礼を受け、父を殺した。
あの頃組織したグールズも今は解散し、散り散りになった。
あれから、再びここの砂を踏んだのは何故だろう。
「おかしいな…」
『ああ、おかしいな』
イシズもリシドも上で待たせているため、この地下には自分しかいない。
マリクの声に返答する存在はいないはずだ。
けれど、応えを自然に受け入れた。
「覚えてるか?ここには木箱があって、その中に父上にみつからないように宝物を隠してたんだ」
『人形とか、綺麗な小石とか、どうでもいいものが多かったよな』
「でも、一生懸命大事にしてた」
今はもう何もない自室を眺めながら、呟く。愛おしそうに。
この響いてくる声に、幼い頃は怯えていた。
奈落の底へ引きずり込まれるような印象しかなかった。
『なんだよ主人格さまよぅ』
「なんでもないよ、お前って面白いなあとか思ってただけ」
『意味不明だなぁおい…』
声の調子で呆れているのが伝わってくる。
ああ、笑ってしまう。
消えたはずのこの人格は、時々顔を覗かせる。
声に怯えることはない。むしろ会話を楽しんでさえいる。
もう闇に呑まれることはないとどこかで分かっているからかもしれない。
償いをできれば、この存在も昇華できるのだろうか。
できれば共に、光を。
『なんでべそかいてやがるんだ?』
「うるさい!」
本気で質問してきた声に、こっちが深刻になって損したと、
仕返しに声のした辺りを叩くまねをした。
痛かった、なぁんてもんじゃねえと大げさな抗議があったが黙殺した。
こういうのもいいのかもな、と思った自分に腹が立ち、砂を蹴った。
砂が目に入ったことにしたかった。
おめでとうございます、主人格>>>>>>>>闇人格の力関係が成立しました\(^o^)/
シリアス、続かない^q^